新興国市場とのお仕事について

私の仕事は、新興国市場と呼ばれる国々における定性的な調査や、情報収集が主である。今から書こうとしていることは、もう少し経験を積んでからにしようかと思っていたのだが、第一弾として書くのもよいのかなと思うことにした。
情報収集や調査依頼がよくある国は、順番に、中国、インド、インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイ、ブラジル、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、ロシア、メキシコ。稀にある国を含むと、30カ国程度の依頼を受けている。
定量調査の依頼もたまにあるが、一番依頼が多いのは、ブランドオーディットと呼ばれるお仕事で、ある特定のブランドが各国でどのように展開されているのかをレポートにするものである。コミュニケーション(広告など)やマーケティング、またそのブランドを所有する企業動向などが含まれる。

フォーマット化を試みたのだが、クライアントさんによって知りたい内容があまりにも異なるため、要望のある内容に応じた情報収集なり調査というかたちをとっている。ウェブサイトには費用を記載しているが、日本などと同様、内容に応じて金額が変わってくるため、事前交渉で決定される。事前交渉には、各国への確認も含まれる。

1年半前から事業をはじめているが、各国への費用が1割から2割くらい上昇傾向にある。理由を聞くと、ブラジルを含む南米の国々からは、物価が上がっているとレターサイズの用紙1枚にびっしり書かれたものが送られてきた。また深夜または早朝からコンタクトを受けることもある。特にブラジルは、欧米なみの金額を要求されることがあり、日本人の感覚からすると非常に高い。その他の国についても、同様な答えが返ってくる。
彼らの理由も正しいと思うのだが、話をよく聞いてみると各提携先の会社は、その国でうまくいっているケースが多く、ビルを建てたり、もしくは高めなオフィスビルに移転したり、また人材を増やしている傾向がある。費用が上がるのも無理はない。全ての国や会社でそういったことがあるわけではなく、誠実に接してくれるところもある。費用感が変わらないほうが、リピート依頼には助かるのだが、残念ながらそういったところは少ない。

どの国も納品日については、守る傾向がある。難しい場合は事前に連絡してくる。稀に依頼のある国では、自身の都合で納品日時を調整することもあるが、それは“その国の時間”で行っているらしい。それでもまる1日くらいの遅れだ。
ただし、レポートの質はどうか?という話については、正直ベースで、平均で7割程度の出来である。これについては、担当した人も影響しているため、国単位で語るのは難しい。特に中国やインドは、都市によっての違いも出てくる。
こちらで事前にインターネットで情報を収集し、その内容を踏まえた上で、依頼をかけるやり方をとっている。事業を始めたころはそれを欠いており、到着したもののプルーフチェックのみを行っていた。プルーフチェックを行うことを想定していなかったのか、調べることが不得意なのかはわからないが、異なる情報が書かれていたり、またレポートの量を増やすため年数が古い情報を入れられることが多かった。あとは要望に応えることができないという連絡ができず、まったく違う情報で作られたりしていることもあった。当時は、平均で3割程度の出来で、期日は守られたが、内容はやり直しということがほとんどであった。各国の状況についてよく把握されているクライアントさんには笑い話となるが、初めての方は理解に苦しまれた。
現在は事前確認を行っているため作業フローも改善されているが、各国から送られてくるものの質が上がったかというと、それでもさきほどのとおり、7割である。もちろん7割のまま提出しているわけはなく、こちらで再度調べ直して、現地に確認をとる作業が何度か繰り返され、レポートの提出となる。

日本人はよく謝るということでバカにされることがあるが、間違いだらけのレポートを送りつけて謝罪してきたのは、30カ国のうち2カ国だけ。ただし謝罪はなくても、多くの国はやり直してくれる。反省しているのかな?と思いたくなる。謝罪のかわりに“逆切れ”交渉などもあり、費用が足らないなど(仕事を依頼した)会社のボスが直接電話してくることもある。なので、試しに追加費用を払ってお願いしたところ、内容は笑えるくらい同じ。まあこのようなものなのだと、思うしかなかった。

今まで書いてきたことは批判的に聞こえるかもしれないが、決して批判ではない。愚痴は若干あるかも。ストレスには強いと思っていたのだが、胃潰瘍が3つも出来ていた。
まだ時間は浅いが、様々なやり方を試して、最終的にもう少し短い時間で、良いレポートが書けるようになればと思っている。
事業を通して、新たな関係も構築でき、また各国の担当の目を通して、その国の状況を把握できていることは大きい。また各国の担当もこちらから学んでいることも多いようで、こちらで使っているある手法を用い、自身のビジネスにしてしまった国もある。そのおかげか、その国のレポートの質はだいぶ上がり、ビジネスもやりやすくなった。
また半年後くらいに、各国または各市場におけるブランドに対する考え方なども踏まえて、書きたいと思う。